2021年7月9日(金)19時から7月23日(金)までチケット購入・視聴可能
*こちらは7月4日(日)@浦安音楽ホール 公演のアーカイブ配信となります。
バロック作品を古楽器で、近現代作品をモダン楽器でお送りする室内楽コンサート。
前半はバロックチェロ・バロックヴィオラ・ギター
後半はモダンチェロ・ギター・ピアノによるアンサンブルとモダンチェロのソロ。
それぞれの時代の、楽器の響きと作品を一度の演奏会でお聴き頂けます。
どうぞお楽しみください。
プログラム:
J.S.Bach: 無伴奏チェロ組曲 第2番(バロックチェロ)
G.P.Telemann, G.F. Händel(古楽トリオ)
H. Villa-Lobos : ブラジル風バッハ第5番よりアリア(ギター&モダンチェロ)
与田和也:モダンチェロのための新曲(世界初演)
C.Debussy: チェロソナタ(ピアノ&モダンチェロ)
出演:
北嶋愛季 (バロックチェロ、モダンチェロ)
中島由布良 (バロックヴィオラ)
岡本拓也 (ギター)
桐栄哲也 (ピアノ)
与田和也 (作曲)
撮影協力:空音舎
協賛:ヘアサロンA10・ゴーシュ弦楽器・笹野治療院
鱗 ― チェロ独奏のための
副題の通り、青藤木葉(あおふじ このは)氏の《鱗》という連作短歌を解釈し、翻案するようにして作曲した。連作を構成する10首それぞれに曲を対応させたため、10曲から成る組曲の形をとる。詩の内容は以下の通り。(ローマ数字は筆者による)
Ⅰ 鱗だと思う 壊れた人の世に震えて肌が零れるさまは
Ⅱ これ以上傷が増えても変わらないあえて火傷をそのままにする
Ⅲ 守るために貼ったはずの絆創膏傷は膿んで悪化している
Ⅳ 女の子だから可哀想らしい そうじゃなくてもずっと痛いよ
Ⅴ 広告の女優が肌を見せるたび少し澱んでく川があること
Ⅵ 触れたいとあなたが言った 鶴のごと私は毎晩薬を塗った
Ⅶ アトピーの私の肌を綺麗だと微笑むあなたの来世を祈る
Ⅷ あなたにはもっと綺麗な子がいいよ例えば流行りのあの女優とか
Ⅸ 無意識に爪を立ててる血が垂れるこれも一種の自傷行為で
Ⅹ 燃えている 燃えている 燃えている肌 羽化しようと 生きていこうと
Ⅰ~Ⅴでは晴れない感情と、根底にある自己否定が表される。ⅥおよびⅦでは「あなた」からの肯定を得るが、Ⅷで再び自己否定に塗り潰される。しかしⅨとⅩで、思考とは切り離された、無意識に体を掻く動作や「燃えている」肌によって、自分の身体が持つ生命力に気づく。
……というのが楽曲の大まかなプロットである。
最後の一首のウェイトが大きい詩の表現を反映して、Ⅹは72小節という、飛び抜けて多い小節数を持つ
(次に多いのは47小節を持つⅨ)。 (与田和也)