人形ルルの大冒険 2023/01/06 02:19 Facebookでシェア URLをコピー 報告 人形ルルの大冒険私の名前はルル 木で作られたお人形あの子と出会い 愛され愛していたあの子と過ごした時間はとても長いこの体が軋み 服はほつれるほどにあの子に愛された幸せな時の中あの子の父に私は捨てられた暗くて狭い箱の中 見えたのはあの子の寝顔硬い扉がそれを私の目から奪い去る明るい光が差し 目を開けたのは森の中重い蓋をこじ開け辺りを見る身の丈より大きな草木に囲まれ青い空が蓋をしているあの子にもう一度会いたくてもう一度愛されたくて軋む体であの子の元へと駆けて行く草木を掻き分け見たのは大きなウサギ足には重く硬い鉄の牙ひどく苦しむその子を救うため左手をもぎ取り口をこじ開けた牙から逃れたウサギは喜び跳ねて私に溢れんばかりの礼を言う「私にできる事なら何なりと」そう言うウサギは問いかける「あのこの場所へ帰りたい」そう告げるとウサギは山を指すあの山を越え その先の川を渡り栄えた町の先にあると告げた私はそこへと駆けて行く山の上へと登り川が見えるそこには大きく暗い穴が遮るその近くに木に絡まった鳥が一羽私はそれを助けるために左手を折りその割れ目の枝でツタを切る鳥は喜び礼をする 私を向こう岸まで運び私は川へと駆けて行く激しい音を轟かせる川へとたどり着いた川の横へそびえ立つ木に持たれる影がひとつ大きな前歯をもつ森の大工のビーバーだ私は服を千切り赤く染みた場所へと巻きつけた彼は大変喜び 木を倒し橋にした私はその上をまたかけて行く遠くには大きな建物の影あと少し もう少し あの子に会える視界が落ちる 軋む足の限界だ手もなく足もなく 想いも止まる目の前にある届かぬ愛に絶望するはじめてルルは諦めた 悲しんだその時体が宙に舞う 小さな手に包まれて見えたのはひどくボロボロなあの子の姿髪はボサボサ 手足は傷だらけそうして聞いたのは名を呼ぶ泣き腫らした声待ち望み 欲しかったあの子の愛情そして私はまたこの懐かしい部屋の棚からあの子を今日も見守っている